ボスの奥様が働いている薬局に除霊ができる人がいる。
その方は霊は見えないのだが感じる能力がとても強い。
強い霊がついている患者さんが薬局に入ってくると吐き気を催して仕事にならなくなるそうだ。
ボスはここ数カ月重度の腰痛に悩まされており、整形外科、整体、針灸に行っても一向に改善しなくて困っていた。
奥様から一度除霊してもらったらどうかと提案されており、見てもらうことになった。
その薬局は私の担当先なので二人で向かった。
その方がボスの背後からパンパンと肩を叩いた。その方は奥様に「しばらくは楽になると思います」と言い走って去っていく。
「目が涙目だったから何かいたのかな?」と奥様。
横ではボスが何度も腰を曲げたり伸ばしたりしている。
「むちゃむちゃ軽い!」
スタスタと歩き始めて先程までとは明らかに違っているのだ。
いや~驚きました。霊って本当にいるんですかね~。と私。
今まで非科学的なものは信じないようにしていたが、目の前でこれだけの変化があれば信じざるを得ない。
翌日、会社でボスに会う。
「調子、どうですか?」
「ああ、軽くなったわ。それより、お前も調子よくないか?」
なんと、あの時に私についていた霊も遠隔除霊をしてくれたという。
不調を感じていなかったのでなんの変化もないが、霊がついてたのかと重い気持ちになった。
むしろ、ボスから離れていった霊がこっちに来たらどうしようなんて考えていたのに、すでにお客さんがいたのだった。
二日後、ひとりで薬局に先日のお礼に行く。
奥様と話していると霊能力者が奥に移動し、嗚咽している声が聞こえてきた。
ものすごく不安になる私である。
翌日ボスに出来事を伝えると、「昨日も除霊したって言ってたよ、今の調子を維持してくださいってさ」
ガーン、である。
たった二日でまた別の霊がついていたというのだ。
勝手についてくるものに対して何を維持しろっていうのだろうか?
体調はここしばらく快調なままだ。
ネットで“除霊”で検索すると、自分を理解してくれそうな人に霊は寄ってくるとか、“霊”ではなくて正確には“気”だとか、いろいろな情報が氾濫している。
深く入り込んでいくと妙な除霊商品を買わないと気が済まなくなりそうなので、やっぱり信じないことにした。
定期的にお墓参りと神社にお参りに行くぐらいで許してほしいなぁ。